2025.07.16
マンションの「敷地権」って何?所有権・敷地利用権との違いや確認方法を解説
マンションを購入すると、専有部分の所有権(区分所有権)を得ることになりますが、マンションの権利関係の用語には、他にも「敷地権」「敷地利用権」といったものも……。
「敷地利用権」は何となく字面からわかりそうですが(マンションの敷地(土地)を利用する権利)、「敷地権」となると、「どういう権利なの?」「所有権や敷地利用権とは何が違うの?」と疑問を持つ方もいるはず。
そこで、今回の記事では敷地権について解説しました。
敷地権とは?
敷地権とは、簡単にいえば「区分所有権+敷地利用権」が一体化した「権利形態」を指します。
権利そのものではなく、「区分所有権と敷地利用権という2つの権利が分離できない状態ですよ」ということを表す用語であるわけです。
敷地権という考え方は、1983年に区分所有法が改正されたときにできたものです。
それ以前、マンションを購入した場合は「区分所有権」と「敷地利用権」の登記が別々に行われており、名義変更が行われるたびに手間がかかり、バラバラに管理されているゆえに手続き上の行き違いが少なくありませんでした。
そのため、区分所有権と敷地利用権の登記をすっきり一本化するために「敷地権」という考え方が生まれ、法律に書き込まれることになったのです。
所有権との違い
上の説明を踏まえたうえで所有権(区分所有権)と「敷地権」の違いをまとめると、以下の通りです。
所有権 |
・専有部分を持ち主が所有し、(常識・法律の範囲内で)自由に扱う権利 ・持ち主は自由に処分できる |
敷地権 |
・所有権と敷地利用権が分離できない権利形態 ・「専有部分の権利だけ手放す」などはできない |
敷地利用権との違い
敷地利用権と敷地権は語感が似ていますが、次のように違いをまとめることができます。
敷地利用権 |
マンションの敷地を利用できるという「権利そのもの」 |
敷地権 |
敷地利用権と区分所有権は分離できないという「権利形態」 |
敷地権の確認方法
詳しくは次のセクションで紹介しますが、実は古いマンションの中には敷地権が設定されていない(区分所有権と敷地利用権の登記がバラバラ)という物件もあります。
敷地権が設定されているか否かを確認するには、次のような方法をとる必要があります。
といっても、いずれも難しいことではありません。
登記簿謄本の取得する
法務局で発行している登記簿謄本を見て、ただ1点、「敷地権」の記載があるかどうかをチェックすれば、すぐに確認できます。
敷地権の記載がある……敷地権が設定されている
敷地権の記載がない……敷地権が設定されていない
登記簿謄本は、法務局の窓口で出してもらえる他、オンラインで取得することも可能です。
不動産会社・管理会社に確認する
こちらのほうがより簡単かと思いますが、マンションを扱っている不動産会社か、管理会社に連絡して確認してみれば、すぐにでもはっきりするでしょう。
敷地権のないマンションも存在する?
すでに書いたように、敷地権という考え方が生まれたのは1983年のこと。それ以後に建てられたマンションは、敷地権が設定されていると考えて間違いありません。
逆にいえば、それ以前に建てられたマンションは敷地権が設定されていないケースもあるのです。
つまり、2025年時点で築40年以上であれば、確認してみるのがおすすめといえます。
敷地権の割合について
敷地権は、マンションの各戸に住む人が持つ権利の形態(区分所有権と敷地利用権は分離されない)のことですが、では、1戸あたりの敷地権の範囲(割合)はどのようにして決まるのでしょうか?
簡単にいうと、【各戸の専有部分の面積÷全戸の総床面積】という計算式で求めることができるのですが、各戸の専有部分の面積は、以下の「壁芯面積」「内法面積」という2つの考え方のうち、「壁芯面積」で算出されることになります。
壁芯面積
文字通り、「壁の芯=厚みの中心」を基準に計算された面積です。
つまり、実際の床面積よりはやや広めの面積になるわけです。
ちなみに、マンションの広告で載せられている面積はこちらであることが多いため、注意が必要です。
内法面積
「壁の内側」を基準にして計算される面積です。
実際の床面積と同じ広さとなります。
計算方法
敷地権の割合を計算する方法は、非常にシンプルです。
【計算方法】
A……各専有部分(1戸あたりの専有部分)
B……マンションにおける全体の専有部分(各戸の専有部分の合計)
上記のように設定した場合の【Aの壁芯面積÷Bの総床面積=敷地権割合】となります。
【例】
極端な例ですが、戸数が「4」で、50m2が1戸、70 m2が3戸あったとしましょう。
つまり、上の条件に即していえば、「Bの総床面積:50+(70×3)=260」となります。
その上で、あなた(A)が50 m2の部屋を所有している場合、計算式に当てはめると、敷地権の割合は【50÷260=約1/5】となります。
また、あなた(A)が70 m2の部屋を所有している場合、敷地権の割合は【70÷260=約1/4】です。
まとめ
あらためてまとめておくと、マンションの敷地権は権利そのものではなく、「区分所有権と敷地利用権は分離できない」という権利形態のことを指します。
これは登記の手間を省くために生み出された考え方ですが、名義変更を行うときなどは、敷地権が設定されていたほうが手続きはシンプルです。
マンションを購入するにあたり、処分や相続のことをしっかり考えるのであれば、よりトラブルの可能性が少ない「敷地権が設定された物件」を選ぶのがおすすめです。