マンション購入を検討していると、「借地権付きマンション」や「定期借地権」といった表記を目にすることもあるでしょう。
・そもそも借地権って何?
・普通のマンションと何が違うの?
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。借地権付きマンションは、一般的な所有権付きマンションとは異なる特徴があるので購入前にしっかりと理解しておくことが大切です。
今回は借地権の基本的なしくみから、借地権の種類、それぞれのメリット・デメリットまでまとめました。

借地権とは?
借地権とは、建物の所有を目的として他人の土地を借りる権利のことです。
1992年に施行された借地借家法により、借地権は「普通借地権」と「定期借地権」の2つに分類されるようになりました。
借地権付きマンションでは、マンションの購入者が建物の所有権を取得し、土地については地主から借りる形となります。そのため、購入価格には土地代が含まれないうえに、土地の固定資産税の支払いは必要ありません。
ただし、地代については地主に対して定期的に支払う必要があります。
支払い方法は物件によって異なりますが、一般的には毎月の管理費と一緒に管理組合が取りまとめて地主に支払う方式が多いです。また、頭金として一定期間の地代を前払いする物件もあります。
ただし、頭金として地代を前払いしている場合は、住宅ローン控除の対象外となる可能性があるので購入前に税務署で確認しましょう。
普通借地権
普通借地権は、契約の更新が可能な借地権です。
契約期間が満了しても、複数回更新ができるため長期間にわたって住み続けることができます。
普通借地権の特徴は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
契約期間 | 30年以上(初回更新20年、2回目以降10年) |
契約更新 | 可能 |
契約方法 | 書面に限らない |
建物買取請求権 | 行使可能 |
ただし、普通借地権付きマンションでは個人で地主と直接交渉することはありません。
管理組合が主体となって全戸分をまとめて地主と契約しておおり、更新の手続も管理組合が主体となって行います。
地主は正当事由なしに契約の更新を拒絶することはできないため、よほどのことがなければ更新できると考えてよいでしょう。
また、更新が終了する場合は、地主に対して「建物買取請求権」を行使することが可能です。ただし、マンション1戸での建物買取請求権の行使は現実的ではない点に注意が必要です。なぜなら、この権利はマンションの所有者全員という団体に属し、その対象も建物全体となるため、個人が所有する1戸だけを地主に買い取らせることはできないためです。
定期借地権
定期借地権は契約期間が定められており、期間満了時に契約の更新ができない借地権です。
定期借地権の特徴は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
契約期間 | 50年以上 |
契約更新 | 不可 |
契約方法 | 公正証書などの書面必須 |
建物買取請求権 | 行使不可 |
マンションでは主に「一般定期借地権」が適用され、存続期間は50年以上と定められています。 普通借地権では口頭での契約が可能ですが、定期借地権は公正証書などの書面による契約が法律で義務付けられています。
契約期間満了時には更新ができず、建物を解体して更地の状態で地主に返還することが義務付けられています。そのため、管理費や修繕積立金とは別に毎月、解体積立金といった名目の費用を管理組合に支払います。更地にして地主へ返還する義務があるため、建物買取請求権の行使もできません。
普通借地権のメリットとデメリット
普通借地権は契約更新が可能で、長期間住み続けることができる一方で、地代などのランニングコストが継続的に発生します。具体的にどのような利点と注意点があるのか、詳しく見てみましょう。
メリット
普通借地権の主なメリットは以下の2つです。
・長期間安心して住み続けられ、資産価値も維持される
普通借地権付きマンションは契約更新で長期間住み続けることができるため、分譲マンションに近い安定した居住環境を確保できます。
また、将来的に売却したり、次の世代へ資産として引き継いだりすることも可能です。

・定期借地権付きマンションと比べて住宅ローンを組みやすい
普通借地権付きマンションは、定期借地権付きマンションと比べて住宅ローンの審査が通りやすくなっています。これは、地代の滞納などの契約違反がない限り、普通借地権は契約の更新が大原則であるためです。
そのため、残り契約期間が短くなっている中古物件でも住宅ローンが組みやすいのもメリットです。
デメリット
一方で、普通借地権ならではのデメリットもあります。
・地主の承諾が必要で自由度が低く、更新料などの追加費用が発生する
建て替えや売却の際は地主の承諾が必要です。特に建て替えについては、住民全員が希望しても地主が承諾しなければ実行できません。
また、普通借地権は20年または10年ごとの更新時に更新料を地主に支払う必要があります。また、売却時や建て替え時には地主への承諾料も発生します。
定期借地権のメリットとデメリット
定期借地権は期間満了時に土地を返還する必要がある一方で、普通借地権にはない独自の魅力もあります。購入前に知っておきたいメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
定期借地権には普通借地権と比べて以下の優れた点があります。
・初期費用をさらに抑えられる
定期借地権付きマンションは、契約期間が限定されているため、権利金や購入価格が普通借地権付きマンションより安く設定されています。初期費用を抑えて住みたい方にとって大きなメリットです。
とにかく初期費用を抑えて好立地に住みたいというニーズには最も適しています。
デメリット
一方で、普通借地権と比べて劣る点もあります。
・資産価値が確実にゼロになる
定期借地権付きマンションは最終的に更地で土地を返還するため、価値が完全に消滅します。
これは避けられないデメリットであり、「資産」として次世代に残すという選択肢が一切ないのはデメリットといえます。
・売却のハードルが非常に高い
定期借地権付きマンションは借地権の残存期間が短くなるほど、買い手はローンを組みにくくなります。
これは、借地権の残存期間と同じか、それ以下の期間でしかローンを組めないためです。
残存期間が短くなれば購入できる買い手は限定され、必然的に売却のハードルが非常に高くなります。
定期借地権付きマンションに向く人
定期借地権付きマンションは以下のような方に向いています。
・資産を次世代に残す必要がない方
子どもが独立している、子どもがいない、または相続を考えていないご夫婦で、期間満了で価値がゼロになることを受け入れられる方に適しています。
・初期費用を抑えて好立地に住みたい方
定期借地権付きマンションは都心や駅近の好立地に建てられることが多く、所有権付き分譲マンションでは価格が高すぎて手が出ない立地に割安で住むことができます。浮いた資金を他の用途に活用できるメリットもあります。
まとめ
住まいを検討する際、多くの人は「賃貸」か「分譲(所有権)」で悩みますが、その中間に「借地権付きマンション」という選択肢があります。
借地権には、更新により半永久的に住める普通借地権と、期間満了で終了する定期借地権の2種類があります。普通借地権は長く住み続けられる安心感が魅力ですが、地代や更新料の負担が続きます。一方、定期借地権は資産にはなりませんが、初期費用を大きく抑えて計画的な暮らしができます。
それぞれの特徴を理解し、ご自身のライフプランに合った選択をしましょう。