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2025.11.26

マンション購入前に知っておきたい──日本ではまだ珍しい「ドライウォール工法」のメリット

マンションを購入するとき、多くの人は立地や価格、間取り、設備などに注目します。
しかし、実は「壁のつくり方」も、住み心地や安全性を左右する重要なポイントのひとつです。

壁の工法によって、耐火性や耐震性、メンテナンス性に大きな違いが生まれることがあります。
その中でも、北米で主流となっている「ドライウォール工法」は、日本ではまだあまり普及していないものの、耐火性や耐震性に優れた高性能な工法として知られています。

今回は、そんなドライウォール工法の仕組みや特徴、
そしてマンションを選ぶうえで知っておくと役立つメリットとデメリットをわかりやすく解説します。

ドライウォールとは?

ドライウォールとは、漆喰やモルタルのように水を使って仕上げる「湿式工法(ウェットウォール)」に対し、
水を使わずに石膏ボードで壁を構成する乾式工法のことを指します。
その名の通り、「乾いた壁=ドライウォール」と呼ばれています。

石膏ボードの天井

この工法が広まったのは、1940~1950年代のアメリカです。
当時は、ベビーブームによって住宅建設の需要が急増しており、従来の工法では建築が追いつかないという課題がありました。

そこで登場したのが施工期間を短く、安定した品質の壁を作れるドライウォール工法です。

ちなみに、日本でも建材製造の技術自体は輸入されたものの、従来の工法が主流であったため、施工技術があまり普及しませんでした。
その結果、現在でも国内ではドライウォールは珍しい工法となっています。

ドライウォール工法

ドライウォール工法の最大の特徴は、「壁の継ぎ目を目立たせず、なめらかに仕上げられる」点にあります。
そのため、角が大きく斜めにカットされた「テーパーエッジ」と呼ばれる石膏ボードを使用します。
斜めにカットされていることによって、ボード同士を並べたときに比較的大きな溝ができるように設計されています。
溝に十分な深さがあることで、テープやパテを下塗り・中塗り・上塗りと3層で処理しても盛り上がらずに平坦に仕上がります。
また、石膏ボード全体が一体化することで内壁全体が面として機能し、高い耐震性や気密性を実現します。

仕上げ面は塗装仕上げとクロス仕上げが主流ですが、発祥元であるアメリカでは塗装仕上げが一般的です。

ドライウォールのメリットとは?

ドライウォール工法で工事中のマンション

ドライウォール工法には、他の内壁工法にはない多くの利点があります。
特に注目すべきは「火に強い」「地震に強い」「メンテナンスがしやすい」という3つの性能面です。

ここでは、それぞれの特徴を具体的に見ていきましょう。

高い耐火性能

ドライウォールに使われる石膏ボードは、もともと燃えにくい石膏を主成分としています。
さらに、石膏の約20%が結晶水で構成されており、高温になると結晶水が水蒸気となって放出され、周囲の温度上昇を抑えます。

また、ドライウォール工法ではボード同士の継ぎ目をパテでしっかりと埋めることで、壁全体の気密性を高めます。
これによって、炎や煙が隙間から侵入するのを防ぎます。
素材と施工の両面から耐火性能を高められる点が、この工法の大きな特長です。

優れた耐震性能

ドライウォール工法では、継ぎ目を丁寧に処理して石膏ボード同士をしっかり固定することで、
壁全体が強固に一体化します。
この構造により、内壁が柱や梁とともに建物を面で支える「耐力壁」として機能し、
地震による横揺れに高い強度を発揮します。

地震が多い日本において、壁そのものが建物を守る構造となるドライウォール工法は、
安心して長く暮らすための心強い選択肢といえるでしょう。

リフォームしやすい

ドライウォール工法の大きな特徴は、部分的な補修や塗り替えが簡単にできることです。
一般的な壁紙(クロス)仕上げの場合、わずかな汚れや傷でも、継ぎ目を目立たせないために広い範囲を貼り替えたり、専門業者に依頼したりする必要があります。

一方、ドライウォールは汚れた部分に同じ塗料をタッチアップ(塗り直し)するだけで修復が完了します。
大掛かりな工事や職人の手を借りる必要がなく、自分でもメンテナンスが可能です。
長く住む住まいほど、こうした維持管理のしやすさは大きなメリットとなります。

ドライウォールのデメリット

ドライウォールは優れた建材・工法ですが、以下のようなデメリットも存在します。

専門技術が必要

ドライウォールは見た目の美しさを実現するために、下地の処理精度が極めて重要です。
正確なジョイント処理やパテ仕上げの技術によって、仕上がりの品質が大きく左右されます

しかし、日本ではドライウォールの施工技術を持つ施工業者が少ないのが現状です。
結果として、施工できる人材の確保が難しく、工事費用も高くなりやすい傾向があります。

工期が長くなる

ドライウォールはクロス仕上げよりも工程が多く、特にジョイント部分の処理には時間を要します。
下塗りから上塗りまで3層のパテ処理を行い、それぞれの層をしっかり乾燥させなければならないため、天候や湿度によって工期が延びることもあります。

パテ処理の乾燥時間を含めると全体の工期が長くなるため、短期間で仕上げたい新築現場やリノベーション工事には不向きな場合もあります。

まとめ

日本ではまだ珍しいドライウォールですが、優れた性能から日本でも注目される可能性があります。
ドライウォールは高い耐火性能と耐震性能といったメリットがあり、メンテナンスもしやすい優れた工法です。
その反面、施工には専門技術が必要で工期が長くなるという課題もあります。

今後はドライウォールを採用したマンションが増えていく可能性もあるため、こうした工法の特徴やメリット・デメリットを知っておくことは、物件を比較検討する際の大切な判断材料になるでしょう。

 

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