マンションを購入する際、多くの方が住宅ローンの借入可能額について検討します。しかし、「希望するエリアや広さの物件を購入したいが、単独では借入額が足りない」という悩みを抱える方も少なくありません。
このような場合に、共働き夫婦が選択できる方法のひとつがペアローンです。
ペアローンは夫婦で住宅ローンを組む仕組みで、借入額を増やせるメリットがあります。ただし、離婚時や収入減少時など、慎重に検討すべきリスクも存在します。
そこで今回は、ペアローンの仕組みや収入合算との違い、メリット・デメリットについてまとめました!
ペアローンと収入合算
夫婦で住宅ローンを利用する際の選択肢には、「ペアローン」と「収入合算」があります。
収入合算にはさらに「連帯債務型」と「連帯保証型」の2種類があるため、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
ペアローン
ペアローンとは、夫婦それぞれが独立した住宅ローン契約を結ぶ方法です。
契約は2本となり、互いに連帯保証人になります。
物件は夫婦の共有名義となり、それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入できます。
また、2人とも住宅ローン控除を利用できるため、世帯全体での節税効果が期待できるのが特徴です。
収入合算:連帯債務型
連帯債務型とは、どちらか一方が主債務者、もう一方が連帯債務者となる方法です。
契約は1本ですが、連帯債務者も主債務者と同等の返済義務を負います。
物件は共有名義となり、2人とも住宅ローン控除を利用できます。
団信については一般的に主債務者のみが加入しますが、フラット35で利用できるデュエット(ペア連生団信)のように金融機関によっては2人とも加入できる商品もあります。
収入合算:連帯保証型
連帯保証型とは、どちらか一方が主債務者、もう一方が連帯保証人となる方法です。契約は1本で、物件は主債務者の単独名義となります。
住宅ローン控除は主債務者のみが利用でき、団信も主債務者のみが加入します。多くの金融機関で利用可能な一般的な形式です。
ペアローンのメリット
ペアローンには、以下のようなメリットがあります。
住宅ローンの借入額の引き上げ
ペアローンでは夫婦それぞれの収入で審査されるため、単独の住宅ローンと比べて借入額を増やすことができます。
これにより、単独では手が届かなかった希望エリアや広い物件も、購入できる可能性が広がります。
また、自己資金が不足している場合でも、ペアローンによって借入額を増やすことでカバーが可能です。
予算の制約が緩和されることで、より理想に近いマンション選びが可能になります。
2人分の住宅ローン控除
ペアローンでは夫婦それぞれが主債務者となるため、2人とも住宅ローン控除の対象となります。
住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残高の0.7%が所得税から最大13年間、控除される制度です。
単独ローンより世帯全体の節税効果が大きくなります。
2人分の控除枠を活用できることで、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。長期的な家計管理を考える上で、大きなメリットといえるでしょう。
ペアローンのデメリット
ペアローンは優れたメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。
離婚時の問題
ペアローンでは契約が2本あり、物件が共有名義となっているため、離婚時の処理が複雑です。
物件を売却する場合は夫婦双方の同意が必要となり、一方的に手続きを進めることはできません。
また、どちらかが住み続けることを選択しても、両方のローン返済義務は継続し、互いに連帯保証人の関係も残ります。
また、物件の売却金額がローン残債を下回る場合は、不足分を自己資金で補填する必要があります。
このように、ペアローンは離婚という人生の転機に柔軟に対応できない点が大きなデメリットといえます。
どちらかに返済能力がなくなるリスク
ペアローンは2人の収入を前提としています。
出産や育児休業、病気による休職や勤務先の業績悪化による減給など、さまざまな理由で収入が減った場合でも、毎月の返済額は変わりません。
その結果、家計を圧迫する場合もあります。
また、収入が減った配偶者の分を肩代わりして、年間110万円を超えた場合、贈与とみなされて贈与税が課される可能性があります。
ペアローンは収入変動に対しても柔軟性が低く、家計管理の難易度が高くなる点に注意が必要です。
まとめ
ペアローンは、共働き夫婦が協力して理想の住まいを手に入れるための有効な手段です。
夫婦それぞれが主債務者となることで、単独ローンよりも借入可能額を増やすことができ、さらに2人分の住宅ローン控除によって大きな節税効果も期待できます。
一方で、離婚時の手続きや収入減少時の返済負担など、リスク面にも注意が必要です。
ペアローンを検討する際は、リスクへの備えを十分に考慮し、無理のない返済計画を立てることが大切です。
夫婦それぞれの収入状況や将来のライフプランを踏まえて、『借入額の増加』と『将来のリスク』のバランスを踏まえて、ペアローンが本当に適しているかを検討し、最適な住宅ローンの形を選びましょう。